講演要旨

「持続可能な社会のための資源・エネルギー生産」
     東京工業大学応用セラミックス研究所教授・原 亨和


 我々が生存し続けるためには,可能な限り環境に与える負荷を低減して化学資源とエネルギーを生産することが必要不可欠である。しかし,我々が気にも留めないこと,良いと思っていることが実際には大きな環境負荷となっていることが多い。本講演では資源とエネルギー生産で普段は見えていない大きな危機,そしてその危機に立ち向かう科学技術を広く公平な視点で考察する。


「バーコードから見た物価安定社会」
     一橋大学経済研究所教授・渡辺 努


 バブルの膨張と崩壊は人々の人生設計を大きく狂わせた。その衝撃の大きさは戦争にも匹敵するほどである。今後,こうした過ちを繰り返さないためには,モノの価格がどのように変化するかを正確に理解する必要がある。2006年度に設立された一橋大学物価研究センターでは,数十億件の価格データを収集し,その変動の仕組みを解析する作業を行っている。その主要な研究成果を紹介したい。


「脂肪組織の驚異とメタボリックシンドローム」
     東京医科歯科大学難治疾患研究所教授・小川 佳宏


 動脈硬化の前駆段階であるメタボリックシンドロームの基盤病態として内臓脂肪型肥満,特に,脂肪組織の生物学が注目されている。肥満の脂肪組織では,脂肪細胞の肥大とともに血管新生やマクロファージの浸潤,アディポサイトカイン産生調節の破綻がもたらされ,「脂肪組織リモデリング」とも言うべきダイナミックな変化をきたしている。脂肪組織の驚くべき多面性を解き明かすことにより,全身臓器の機能障害を特徴とするメタボリックシンドロームの成因の解明と新しい治療戦略の開発が期待される。


「『新たな戦争』の時代における人間の安全と安心:アジア・アフリカからの視点」
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授・黒木 英充


 9/11事件以降,世界は新たな戦争の時代に突入したといわれ,より確かな「安全」を求めて社会の制度的な改編が進んできた。しかしこれにより人々は「安心」を得られるようになっただろうか。アジア・アフリカ,特に中東は様々な戦争・紛争の舞台となってきたが,そこで人々は安全や安心をどうとらえているのか,信用をどう構築しようとしているのか。こうした問題をめぐり,新たな学問的取り組みが必要とされている。



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